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岩間朝子がボルボ スタジオ 青山で作品展を開催

March 16, 2020

ハマナスの移動が紡ぎ出す、多層的なストーリー

自然と人間の関係性や、「食べること」「滋養」についての考察をもとに制作を行うアーティスト、岩間朝子。「植物の移動」に関心を持ちリサーチを続けてきた岩間の作品展に迫る。

リソグラフを用いて印刷された、ハマナスにまつわる物語のポスター。来場者は自由に持ち帰ることができる

私はハマナスについて何も知らない。なんでも日本原産の品種で、赤い実がなるバラ科の植物のひとつだという。その赤い実がローズヒップと呼ばれるもので、ハマナスのローズヒップは写真で見るとミニトマトのようだ。18世紀に東インド会社を通じて長崎にやってきたスウェーデン人の医者・植物学者のツュンベリーによって命名され、『日本植物誌』(1784)によってヨーロッパに紹介された。その後、実際にヨーロッパにハマナスが持ち込まれたのは19世紀のこと。

岩間は食や滋養についての考察を続けている。現在、オランダ在住の岩間は近所に自生しているハマナスのローズヒップの実を採取、その種を丁寧に取り除いて実の部分のみを火にかけ、砂糖を加えてペースト状にした。スウェーデンの伝統的なスープ料理、ニッポンソッパをつくろうというのだ。ニッポンというのはスウェーデン語で実(ヒップ)という意味で、日本とはなんの関係もない。

展示風景。手前はローズヒップのペーストをつくる過程の写真

本展では岩間の生活圏内にある素材をもとに人の移動の歴史、その交錯が生み出した新たな文化、植物が示唆する政治的パワーバランスなど、歴史や文化の流れを俯瞰するストーリーを紡ぎ出した。会場ではローズヒップのペーストをつくる過程の写真のほかに、その瓶詰めを展示することで、料理を通して人間が生み出した素材の質感や文脈を堪能するきっかけをつくっている。

左:ローズヒップのペーストの瓶詰め
右:初日のイベントで振る舞われたハマナスのニッポンソッパ

初日のイベントではローズヒップのペーストをお湯で溶いたニッポンソッパが参加者に振る舞われた。よくかき混ぜるとお湯の中でふんわりと鮮やかな朱色が湧きたち混ざり合う。苦労して実の中にみっちり詰まった種と毛を取り除いたというエピソードにもかかわらず、スープを飲むと口の中に短い毛が触り、毛深い種の力強さを舌で体験する。

200年以上前に日本で採集されたハマナスはヨーロッパで勢いよく育ち、さらにその実がスウェーデンの家庭の食卓を彩る朱色のスープになった。そのテーブルでは「ニッポンソッパ」という言葉が何度行き交ったことだろう。この言葉を通じて遠い2つの国がコネクトする。

美術手帖×VOLVO ART PROJECT vol .11
岩間朝子「ハマナスのニッポンソッパ[Nyponsoppa]」展
ボルボ スタジオ 青山

輸入車ブランド・ボルボのコンセプトストアで開催される『美術手帖』とボルボによるアートプロジェクト。『美術手帖』がプロデュースしたアーティストによる作品展示やパフォーマンスを定期的に実施。第11回となる今回は岩間朝子による作品展が開催された。

ボルボ スタジオ 青山の詳細はこちら

永井佳子=文 菅野恒平=撮影 Text by Yoshiko Nagai Photo by Kohei Kanno
美術手帖 2020年4月号より転載

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